今回はハン・ガンさんの「涙の箱」を読みました。
大人のための童話。
読み終えて「あの人にも読んで欲しいな」とふたりの友人の顔が浮かびました。
物語をおなじように美しい装丁は、贈り物にもぴったりだと思います。
ひとりには誕生日に、もうひとりにはクリスマスプレゼントに・・・
ハン・ガン(Han Kang)は韓国の作家。
2024年にノーベル文学賞を受賞した。(アジア人女性初)
- 『菜食主義者』
- 『少年が来る』
- 『すべての、白いものたちの』
- 『別れを告げない』
- 『そっと静かに』
あらすじ
ある村に〈涙つぼ〉と呼ばれる子どもがいた。
その子はみんながまるで予測も理解もできないところで涙を流す特別なところがある子どもだった。
ある年、その子どものところに真っ黒い服を着た男がやってきた。「純粋な涙」を探しているという。
男の大きな黒いカバンから取り出した箱の中には、様々な形や色をした涙が宝石のように陳列していた。
著者: ハン・ガン(作), 
    きむ・ふな(訳)
発売日: 2025年08月15日
出版社: 評論社
商品番号: 9784566024892
言語: 日本語
感 想
手に取ったきっかけは美しい装画でした。瞳を閉じた子どもの頭には、花や生き物、お城のような建物・・・で覆われています。子どもの腕の中にも。装画・挿絵はjunaida(ジュナイダ)さん。とてもあたたかい絵です。
この物語のテーマは『涙』。
私があの時流した涙は何色だっただろう。あの時は影が流していたかもしれない。
読み終えた後はそんなことを思いました。
おじさんが収集した涙の結晶が、とても大切に大切にされていて素敵でした。
カバンから取り出した涙の箱には10種類以上のカラフルな涙が並んでいます。人は悲しい時、うれしい時に人は涙を流します。ほかにも『嘘で流す涙』『会いたい人に会えないときに流す涙』など様々な涙の結晶が陳列していました。透明な涙が結晶になると色が付き、まるで宝石のように美しいそう。作中にあった『玉ねぎの匂いを嗅いだ時の涙』の色が気になりますね。何色なんだろう?
物語の中では、赤ん坊のとき以来泣けなくなったお爺さんが登場します。
大切な人が亡くなった時、『泣かないから悲しんでいない』とは思いません。悲しみ方は人それぞれだと思うから。
でも泣きたいのに泣けないのは、きっと想像以上に苦しいのかもしれません。
大人になって泣けなくなったという人は多いと聞きます。
涙を流すことは悪いことではない。泣けないことも悪いことではない。
素直に泣ける自由な心と、時には涙を堪える強さを持っていたらきっと素敵だね!というメッセージを感じました。
また読み返したい物語です。
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